オリジナル再結成のセットリスト研究
Research on Set Lists of "THE ORIGINAL REUNION"
1997年5月24日〜2005年9月4日


'97年にOzzy Osbourneとの再合流を果たしたBLACK SABBATHは、以後'05年まで基本的にライヴだけを行います。各ツアーを見る前に、ここで最初に概要をまとめます。通常ツアーとは違うので、その方がイメージ/特徴を掴みやすいかと思いまして。

1997〜2005年の公演数
1997年: 23回 2002年: なし
1998年: 14回 2003年: なし
1999年: 71回 2004年: 25回
2000年: なし 2005年: 37回
2001年: 33回 合計: 203回
 まずはライヴの回数。左表の通り「全203公演」です。9年間でこの回数は驚くほど少ないですが、ほとんどが短いOZZFESTツアーで、しかも毎年はやってない。実際に数えてみるとこんなものなんですよね。
 そして、ライヴの本数以上に特別なのが活動コンセプト。この時期は他の通常ツアーと異なり、新作のプロモーションではなく“伝説の復活”に終始しています。言い換えれば、バンド自身が自らの過去を振り返り、毎晩ステージで「これぞORIGINAL SABBATHだ!」を示し続けた9年間だったわけです。


ORIGINAL SABBATH最重要となる「核の8曲」

全曲の演奏回数(1997〜2005年)
順位 曲 名 実測 推計 演奏率 収録アルバム
1位 Paranoid 179 203 100% PARANOID
War Pigs 179 203 100% PARANOID
3位 Black Sabbath 178 202 99.5% BLACK SABBATH
4位 Iron Man 176 200 99% PARANOID
Children of the Grave 176 200 99% MASTER OF REALITY
6位 Into the Void 168 192 95% MASTER OF REALITY
7位 N.I.B. 159 182 90% BLACK SABBATH
8位 Fairies Wear Boots 156 172 85% PARANOID
9位 Snowblind 122 142 70% VOL. 4
10位 Electric Funeral 114 124 61% PARANOID
11位 After Forever 101 108 53% MASTER OF REALITY
12位 Sweet Leaf 93 103 51% MASTER OF REALITY
13位 Dirty Women 77 78 38% TECHNICAL ECSTASY
14位 The Wizard 51 60 30% BLACK SABBATH
15位 Scary Dreams 23 31 15% 新 曲
16位 Lord of this World 12 15 7% MASTER OF REALITY
Spiral Architect 12 15 7% SABBATH BLOODY SABBATH
18位 Sabbath Bloody Sabbath 11 14 7% SABBATH BLOODY SABBATH
19位 Tomorrow's Dream 7 7 3% VOL. 4
20位 Behind the Wall of Sleep 4 4 2% BLACK SABBATH
21位 Under the Sun 2 2 1% VOL. 4
22位 Cornucopia 1 1 0.5% VOL. 4
Killing Yourself to Live 1 1 0.5% SABBATH BLOODY SABBATH
※実測: 音源情報やコンサートレビューのセットリストから数えました。これで全日程203公演の9割ほど。
※推計: 全日程の推定演奏回数。曲目情報がない残り1割の日程は、前後のライヴと同じにしてカウントしました。わりとセットリストを固定するバンドなので、実際と大した差はないと思います(むしろ、レビューの記憶違いの方が怖い:苦笑)。
※演奏率: 「推計」を元にした確率。降水確率みたいなもので、仮にライヴを観たら何%くらい期待できるかってことです。
※代役のステージ: Bill Wardの代役が叩いたツアーやRob Halfordが歌った2004年のCamden公演もカウントの対象です。「Original SABBATH」として計画されたライヴですし、代役だからって曲目が変わるわけでもないですからね。ちなみに代役分のステージを抜いた集計でもN.I.B.が同率1位になるくらいで他に大差ありません。
※TV出演や飛び入り: 「Paranoidを一発!」のような演奏は除外。入れても他の曲がコンマ数%落ちるだけで、結果は同じです。
※音源情報とライヴレビュー: 両者が食い違う場合は、基本的に証拠のある音源情報を重視しました。あくまでケース・バイ・ケースですけどね。
※その他: 以下の曲はカウントから除外。そこまでちゃんと把握している録音やレビューが少なく、混ぜると不確実になるためです。
●ショウの前後に流れる録音曲:Sabbath Medley、Supertzar、Changes、Kashmir、Robin Hood
●イントロ小曲:Wasp、Bassically、Embryo、Orchid、A Bit of Finger
●さわりだけ演奏された曲:Supernaut、Symptom of the Universe、Sweet Leaf、Sabbath Bloody Sabbath(Sweet LeafとSabbath Bloody Sabbathはフル演奏と思われる場合のみカウント)
 そこで気になってくるのがバンド自身の結論。「これぞSABBATH」に不可欠なのはどんな曲だったのか?
 それを探るべく、この9年間で披露された曲の演奏回数を数えたのが右表です。細かいことは表注を見ていただくとして、重要なのは「演奏率」。これで順位を決めてまして、高い曲ほどバンド自身が「不可欠」と考え(そして実行し)ている、というわけですね。
 見てみると1位〜同率4位までの5曲は演奏率99%以上。「絶対の5曲」ですね。歴代シンガーも歌ってきましたし、この5曲がそろってないだけで「超レアな日」になるくらいです。
 ただ、この5曲だけでコンサートは成り立たず、どんなに少なくても8位のFairies Wear Bootsまでは必要。これを「核の8曲」と呼ぶことにします。

1. War Pigs
2. N.I.B.
3. Fairies Wear Boots
4. Into the Void
5. Black Sabbath
6. Iron Man
7. Children of the Grave
8. Paranoid

 これが「核の8曲」。ランキングの上位8曲なだけでなく、実際に演奏されたことのあるオーダーです。(イベントやTV出演、トラブルを除き)これ以上短いステージはなく、「最も厳選されたセットリスト」とも言えます。
 また、この曲順も極めて重要でして、実は全公演の半分以上がこの流れを基本としています。もちろん、ツアーや機会ごとにセットリストも違うわけですが、基本的にこの8曲のすき間に他の曲を挟む構造が多いのです(下図)。

順番まで同じままセットリストの骨子になる「核の8曲」
BIRMINGHAM NEC '97 OZZFEST '98 World Tour '99 OZZFEST 2004
War Pigs
Behind the Wall of Sleep
N.I.B.
Fairies Wear Boots

Electric Funeral
Sweet Leaf
Spiral Architect
Into the Void
Snowblind
Lord of this World
Sabbath Bloody Sabbath
Dirty Women
 
Black Sabbath
 
Iron Man
Children of the Grave
Paranoid
War Pigs
 
N.I.B.
Fairies Wear Boots

Snowblind
 
 
Into the Void
Spiral Architect
Lord of this World
Sweet Leaf
Electric Funeral
Sabbath Bloody Sabbath
Black Sabbath
 
Iron Man
Children of the Grave
Paranoid
War Pigs
 
N.I.B.
Fairies Wear Boots

After Forever
Electric Funeral
Sweet Leaf
Into the Void
Snowblind
 
 
 
 
Black Sabbath
 
Iron Man
Children of the Grave
Paranoid
War Pigs
 
N.I.B.
Fairies Wear Boots
 
 
 
Into the Void

 
 
 
 
 
Black Sabbath
Snowblind
Iron Man
Children of the Grave
Paranoid

 赤い字の5曲がトップ5で、さらに8位までのオレンジ字の3曲を加えたものが「核の8曲」。ご覧の通り、この8曲だけ拾ってみると順番まで同じ。しかも、この8曲はスタートダッシュとクライマックスという重要な位置に配置され、まさに「ライヴの要」となっているのがよく分かります。それに比べ、9位以下の曲(白文字)は位置も流動的でセットの中の役割が定まっていないようです。
 この8曲のライヴ盤があれば「究極のベスト盤」代わりになるんですが、そうそう話は簡単ではない。ほとんどの場合は他の曲も追加されて、「核の8曲」だけのライヴとなるとわずか3〜5公演しかありません。その中でマトモな音源となると……実はRob Halfordの歌った2004年のCamden公演だけなんですよね。偶然とは言え、貴重な記念共演なだけでなく「究極のベスト選曲」でもあったとは、私も驚きました。



 それでは「核の8曲」以外の曲も見ていきましょう。「演奏率」をグラフにしてみると、ワンランクの最大差(15%)でガクッと落ちる箇所が2つあります。8位Fairies Wear Boots〜9位Snowblindの間と、14位The Wizard〜15位Scary Dreamsの間(右図)。
 意識的にか無意識的か、ここに曲の扱いの“壁”があるらしく、セットリストの組み方とも符合しています。これに合わせ、本ページでは「核の8曲」「中堅曲」「少回数曲」の3つに大別します。

ブレンドで“色”を生む「中堅曲」

A. 「核の8曲」に次ぐ準レギュラー曲
順位 曲 名 演奏率 収録アルバム
9位 Snowblind 70% VOL. 4
10位 Electric Funeral 61% PARANOID
12位 Sweet Leaf 51% MASTER OF REALITY
B. 気分を変えたいときの重宝曲
順位 曲 名 演奏率 収録アルバム
11位 After Forever 53% MASTER OF REALITY
13位 Dirty Women 38% TECHNICAL ECSTASY
14位 The Wizard 30% BLACK SABBATH
 「演奏率30〜70%」が中堅曲。その中でも特に左の「A」は「核の8曲」に次ぐ演奏頻度です。代表曲と呼んでもおかしくない知名度ながら、絶対欠かせないというほどでもない。「準レギュラー」とでも呼べそうな曲達です。
 「B」は「ちょっと変わったセット」に使用される曲。レア曲なわけではなく、忘れた頃に度々復活してはツアーを通して演奏されます。順位はSweet Leaf(12位)よりAfter Forever(11位)の方が上ですが、扱いではコチラのようです。
 「核の8曲」に「A」「B」をブレンドすることでセットリストの基本が形作られており、配合によってセットの個性が変わっていくわけですね。


 ここでも上位と同じく1st〜3rdの曲が多いですが、「VOL. 4」のSnowblind、「TECHNICAL ECSTASY」のDirty Womenも顔を出しています。両曲にはそれぞれ'70年代中〜後期を代表する役目もあったように思われます。

消えていった「少回数曲」

C. 次第に演らなくなった脱落曲
順位 曲 名 演奏率 収録アルバム
16位 Lord of this World 7% MASTER OF REALITY
Spiral Architect 7% SABBATH BLOODY SABBATH
18位 Sabbath Bloody Sabbath 7% SABBATH BLOODY SABBATH
D. サプライズで終わった単発曲
順位 曲 名 演奏率 収録アルバム
15位 Scary Dreams 15% 新 曲
19位 Tomorrow's Dream 3% VOL. 4
20位 Behind the Wall of Sleep 2% BLACK SABBATH
21位 Under the Sun 1% VOL. 4
22位 Cornucopia 0.5% VOL. 4
Killing Yourself to Live 0.5% SABBATH BLOODY SABBATH
 次は「演奏率15%以下」の少回数曲。感覚としては「試したけどイマイチ」といったところでしょうか。右の「C」は記念すべき「REUNION」でセットに登場するものの、次第に演奏回数が減っていき、消えてしまいました。長くても'99年の初頭までですね。その後はSabbath Bloody Sabbathのリフがちょっとプレイされる程度です。
 「D」の6曲は、わずか数回だけ試して消えた幻の曲です。「REUNION」で馴染みのあるBehind the Wall of Sleepも演奏はたったの4回でした。新曲のScary Dreamsは演奏回数だけ見ると30回近くもある「C」以上の曲なのですが、結局レコーディングもされずに2001年の1ツアーだけで消えてしまいました。

 この辺になるとほとんどが「VOL.4」「SABBATH BLOODY SABBATH」からの曲ですね。私には一番ツボな時期なんですケド(苦笑)。この他、「SABOTAGE」からはSymtom of the Universeのリフだけがたまにプレイされる程度(リハーサルはしたそう)で、「NEVER SAY DIE」からは一切取り上げられませんでした。


風変わりのスタンダード
OZZFEST 2001   World Tour 2005  
Intro: Sabbath Medley
N.I.B. 1 N.I.B.
Snowblind 2 After Forever
Under the Sun 3 War Pigs
Fairies Wear Boots 4 Dirty Women
Scary Dreams 5 Fairies Wear Boots
War Pigs 6 Electric Funeral
Iron Man 7 Iron Man
Into the Void 8 Into the Void
The Wizard 9 Black Sabbath
Black Sabbath 10 The Wizard
Paranoid 11 Paranoid
Children of the Grave 12 Children of the Grave
Outro: Changes

 前述した通り、再結成ステージの半分以上は「核の8曲」が順番もそのままにセットの骨子となっていました。その一方、オリジナルを続けるうちに飽きてきたのか、時折、風変わりなオーダーを演るようにもなります。その代表的なものが2001年と2005年です(左図)。
 この2つでも「核の8曲」はすべて演奏されてますが、構造が大きく異なります。ポールポジションがN.I.B.、アンコールがChildren of the Graveなだけでなく、「核の8曲」の並びがことごとく崩されています。
 また、この2つ同士はよく似てもいます。特にIron Man以降の後半部はThe WizardとBlack Sabbath順番が逆なだけで、終演BGMのChangesまでもが同じ。そもそもThe Wizard自体が、この構造の時にだけ演奏される曲です。これが「風変わりにしたい時の定型」のようですね。


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"THE ORIGINAL" REUNION
LIVE AID '85 / COSTA MESA '92 /
セットリスト研究 / REUNON Recordings / BIRMINGHAM NEC '97 /
Reunion Tour '98-99 / OZZFEST 2001 Tour / OZZFEST 2004 Tour / Reunion Tour 2005

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